こう宣言された老人ニコデモは聖書学者であり宗教指導者だった。それでも心では神に憧れ、夜に隠れて「神の御言、キリスト」に会いに来た。そこで「神は独り子を与えたほどにあなたを愛している」と聖霊による新しい命を告げられた。
そのときニコデモは「我に返った」(ルカ15:17)。本当の自分を思い出し、神を思い出した。神の内に新しく生まれる自分を意識した。自分の内なる神の似姿が新しくされるのを理解し、過去も今もこれからも、決して自分を忘れず覚え、愛し続けてくださる神を、愛し返し始めた。
古代の主教アウグスティヌスが教えるには、私たちは三位一体の似姿に造られ、修復され、新たにされ、神の命に与かる。私たちは、神に愛されている自分自身を覚えて意識し、言葉で理解して表現し、肯定して愛するとき、神の似姿になる。「自分の記憶と、理解と、愛」こそ心に彫り込まれた父と子と聖霊なる三位一体の似姿だと。
難解なアウグスティヌスの「三位一体論」の中心は「記憶」だ。私が「我に返って」本当の自分を思い出し意識する時、私は神を覚えて意識している。神の内にいる自分を思い起こす心、それが父の似姿だ。それを父が与えたのだ。父なる神はいつもあなたを忘れず、記憶し、覚えていて、罪に汚れたときには救って下さる。これが父の愛だ。聖霊だ。そしてこの愛を理解し、命がけで表現したのがイエスさまだ。
ニコデモを、あなたを、父はいつも覚えている。あなたはいつも父の瞳の中にいる。その眼差しの中で、神に愛されている本当の自分をいつも覚え、理解し、愛そう。
「あなたを造った私自身が、あなたの内の似姿を新たに生まれさせ、神の国を見せるから。」
「聖アウグスチス」フィリップ・ド・シャンパーニュ,1602年,
https://sco.wikipedia.org/wiki/Augustinus#/media/File:Saint_Augustine_by_Philippe_de_Champaigne.jpg