歌ってあげるから 「詩篇と聖歌と霊的な歌によって語りあいなさい」(エフェソ5:19)

2021/08/13

その浪人生はもう限界だった。彼女はテストが苦手で高校も大学もありとあらゆる受験にことごとく失敗し、さらに迫り来る2年目の大学受験にも合格しそうにない。青春の只中で、絶望していた。


そうして彼女は教会に辿り着いた。そこで牧師夫人に、涙ながらに語る自分の不安な気持ちを、忍耐強く聞いてもらった。その牧師夫人は話をよく聞いたあと、もう何にも掛けてあげる言葉が尽きたのか、最後にアカペラで聖歌481番を歌ってくれた。


    この世の波風さわぎ    

            いざないしげき時も   

    悲しみ嘆きの嵐         

            胸に荒ぶ時にも

    み前に集い祈れば   

            悩みさり憂きは消ゆ

 いざともにたたえ歌わん 

            恵み深き主のみ名


自分のために歌ってくれた聖歌に、その共感に、浪人生は心から慰められた。それからというものずっと、この聖歌は彼女の人生の応援歌になった。そして、いつしか神の不思議なご計画により、彼女自身も牧師夫人になった。


聖歌は、個人の満足を超えて、「互いに語り合うため」に歌えとパウロは勧める。人が苦しい時、慰めが必要な時、病気の時、死が近い時、言葉にならない時、そしてたとえ戦後の焼け野原でさえ、私たちには聖歌がある。下手でいい。真心を込めて「人のために」歌えば、それは人生を支えるほどの力を持つ。


イエスさまは十字架につけられる前夜に歌われた。「一同は賛美の歌を歌った」(マルコ14:26)。弟子らはその歌声を覚えていて、それに慰め励まされ、生きていった。


「あなたのためなら、わたしはいつでも歌うよ。だから元気を出しなよ、一緒に歌おうよ、恵み深き主のみ名を。」



ハンス・メムリンク「キリストと歌う天使ら」1480年代。アントワープ美術館 蔵
 

このブログを検索

そのほかのメッセージ

ラベル

復活 十字架 神の愛 聖餐式 イエス 信仰 受肉 祈り 三位一体 神の国 聖霊 アッバ 癒し 赦し キリスト 委ねる 悔い改め 救い 自分らしさ アブラハム クリスマス ゲセマネ 勝利 召命 変容 恵み 悪霊 教会 昇天 神の子 羊飼い 解放 ぶどう園 インマヌエル ゲッセマネ 兄弟姉妹 喜び 大祭司 奇跡 嫉妬 子ども 弱さ 忍耐 悔い改め、荒れ野 悪魔 感謝 放蕩息子 洗礼 洗礼者ヨハネ 神の支配 行い 過ぎ越し 陪餐 うつ かみのくに からし種 み名 み心 アダム イスラエル エリヤ ガリラヤ サマリア人 ザアカイ スキャンダル タラントン タリタクム トマス パン裂き ピスティス ペテロ ペトロ マリア マルタ メシア ヤイロ ユダ ユーカリスト ラザロ 不安 不正な管理人 主の祈り 今ここに 伝道 信頼 偶像 共感 再創造 再臨 出エジプト 創造主 十戒 受難 境界線 天国 奉仕 奉献 婚宴 宣教 希望 平安 律法学者 従順 忠誠 憐れみ 懺悔 成就 戒め、山上の説教 承認欲求 招き 新しい創造 最後の晩餐 栄光 楽園 権威 歴史 毒麦の譬え 洗足式 灰の水曜日 無力 父、三位一体 独り子 生きる意味 疑い 病い 真理 礼拝 祝福 神の家 神の言葉 神殿 祭司 種蒔き 絶望 聖書 自己肯定 自由 苦難の僕 裁き 見失った羊 覚悟 親密さ 観想 記憶 誓約 誘惑 譬え 貧しい人 貧しい人、共有、復活 賜物 賢明さ 迫害 追放 重荷 障害 静けさ 食卓

自己紹介

自分の写真
大津市, 滋賀県, Japan
聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

日本聖公会京都教区 大津聖マリア教会

Wikipedia

検索結果

コメント

名前

メール *

メッセージ *

Tags

QooQ