苦しみの勝利

2023/03/29

受難 十字架 勝利

 「ユダヤ人の王」マタイ福音書27章29節

2023年4月2日 復活節前主日 (A年)

Fra Angelico - Saint Dominic Adoring the Crucifixion.サン・マルコ美術館


   磔刑像で、イエスさまの上には「INRI」と書かれています。これはラテン語で、「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」という意味です。もちろんこれは、ローマ総督ピラトが政治犯としての罪状を書いたのですが、聖書では皮肉になっており、神さまの真実に照らしても、ナザレのイエスさまは「ユダヤ人(どころか全ての人の)王」です。

 本当の意味でも、十字架のイエスさまは私たちの王です。しかも私たちの敵である(罪も死も含めた意味での)悪に勝利された王さまです。子なる神さまとして、私たちが隷属していた悪を自らのうちに全て引き受け、悪もろとも死ぬことで滅ぼし、勝利されたのです。

 ですから主の受難は本来、「これほどまでに私は罪深いのか」と嘆くのではなく「これほどまでの悪に神さまは勝利された」と喜ぶための物語です。神に見放される、という苦しみと悪の極みに至るまで神さまはご自分の内に受け取られた。そして神さまは私たちが苦しんでおられるのを見過ごしにできないのです。主の苦しみはそれほどまでに私たちを愛し、解放し、創り変えられ始められたことの目に見える印です。

 私たちを悪に勝たせる。その目的のためにイエスさまは死に至るまで従順であられました。それほど愛してくださるのです。そして私たちは、神さまの愛の戦利品、その喜び、新しく創造された、栄光を映し出す鏡のような「似姿」なのです。

 悪を引き受けて苦しみ、悪を滅ぼされた神さまの愛をよく知り、「万歳」と褒め称えて礼拝しましよう。愛の人生によっても、神を礼拝しましょう。

「安心しなさい。私たち、神とあなたは、全ての悪に勝った。」


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聖公会京都教区の司祭です。大津聖マリア教会勤務です。うつ当事者として自助グループ「マ・カタリーナ」の世話人もしています。リンクをご覧ください。

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